2025/05/01  
ケーブル構造と音質の関係に関して

この記事は「ケーブルを選ぶうえで2番目に見るべきこと」 の続きなのですが、ケーブル構造と言っても一部のエキゾチックケーブルを除けば、基本的にはツイスト、スターカッド、ストレート、同軸のくらいしかないし、自分の感覚からするとどれも大差ない感じなので、特に話すことがない。自分が作るにしてもこれらの構造を採用することはまずないだろうしね。
そもそも上級者がただのツイストケーブルだのスターカッドケーブルだのを使うとは思えないし、そうなってくると上級者向けと言うより初心者向けっぽくなっちゃうのだけど・・・まぁ?結構なお値段でスターカッドのケーブルは存在するし、基本的な構造と音質の関係を知っていれば、応用を利かせれば、違う構造のケーブルでも買う際の尺度くらいにはなるだろう。

それで、ツイスト、スターカッド、ストレート、同軸の音質傾向ですが、構造だけで音質が決まることはありませんが、自分の経験上あえて序列を作るとしたら、

解像度や定位で言うと
ストレート<ツイスト<同軸<スターカッド

音色の良さ素直さで言うと
同軸<スターカッド<ツイスト<ストレート

といった感じでしょうか。もちろん構造以外の要素で序列は入れ替わります。大体のイメージなのでそこまで正確ではないです。

ノイズに強い構造の方が解像度や定位では優位といった感じでしょうか。それだと同軸が一番優位のはずですが、同軸は+-線の対称性が良くないので音に不自然な感じが付いて回ります。また、シールドの影響で信号が乱れるので、音質はシールド次第なところが大きいのです。同軸は理論上は優れていても、実聴ではそれほどでもないというところでしょうか。外来ノイズに強くてもケーブル内で生じるノイズが多ければ意味がないということです。


この中では解像度や定位ではスターカッドが良いと言っていますが、音色ではそこまでではないと思います。なぜならスターカッド構造は構造を保持するための外装が必要で、さらに製品によっては介在物を追加してあるものもあります。その余計な部品がノイズ源になって音色を汚すからです。また、線を通常の2倍必要とするので、絶縁体が2倍、導体が2倍となってしまいます。絶縁体も導体も厳密にはノイズ源となりますから、その点では音質的にプラスになりません。スターカッドはケーブル内で生じるノイズを最小にするには最良の構造とは言えないのです。
介在物については市販のケーブルでは、介在物の素材をあれこれ組み合わせてチューニングしたと謳うものがありますが、これで音が良くなるとしたら、振動対策として働いている場合のみで、電気的には音質的プラスになることはありません。介在物の素材、最外層のジャケットの素材、絶縁体の素材、もしくは導体の種類をいろいろ組み合わせても、音のキャラクターは変わっても本質的に音質が上がることはありません。「そもそも一番音が良い素材があるならそれだけ使えばいいじゃん?」と思うものですが、それでも素材の癖というのはどうしても出るので、他の素材を組み合わせてニュートラルに持っていきたいということなのでしょう。それよりは素材の使用量自体を減らして癖自体減らしていく方が良いというのが、現在の私の考えです。

伝送のシンプルさで言うと、スターカッドよりもストレートが一番良いのですが、ストレートは外来ノイズに無力なうえに、線間のクロストークにも無策です。線間のクロストークはスペーサーを入れると緩和されますが、その場合、外来ノイズにさらに弱くなり、インダクタンスも増加してしまいます。そしてスペーサー由来のノイズが増えてしまいます。

ツイストすると、外来ノイズに強くなりますが、導体の長さが増えるのでインダクタンスも増加します。そもそも電気信号が螺旋を描きながら伝わっていくので、まっすぐ伝わっていくストレート構造と比べると音質的ロスが生じてしまいます。


・・・結局どの構造も一長一短であり、素材由来のノイズを減らそうと思えば、ストレートが最もよく、外来ノイズや、線間のクロストーク、インダクタンスを減らそうと考えるなら、構造を組んだ方が有利ということになります。良いケーブルを作ろうとするなら、外来ノイズや、線間のクロストーク、インダクタンスを減らしながら、素材の使用量を最小限に抑えたものが最も良いケーブル構造ということになります。
個人的にはキンバーの編み込みケーブルは上の条件に照らし合わせるなら結構いい線いっていると思います。ただ絶縁材料に色がついていたり、構造的にも完ぺきとは思わないけど、自分が市販品の中から選ぶならこれかな。でもキンバーの中級〜最高級ラインは、外観良くするためにジャケット被せたりしてるので選択肢に入りませんがね。いくら金を積んでも物理現象には逆らえない。


おっと、ここでは一般的なツイスト、スターカッド、ストレート、同軸の中ではどれを買ったらいいの?って話でしたね。
結論を言うと解像度や定位を重視するならスターカッド切り売り買って平行接続(一般的なカッド接続ではない接続法ね。下の画像参照。)、音色重視ならストレート線で絶縁材料が極力少ないものを選ぶのが良い。導体は単線か準単線。絶縁体は色素が入ってないものならなおよし。
という感じでしょうか。まぁ、でもね、これは合理的ではあるけど妥協に妥協を重ねた選択でしかないので自分は選ばないし、上級者の人にはお勧めはしない。ケーブルに興味ないし、極力安く済ませたい。でも自分の選択に納得したい。そういう人にはお勧めする。


スタークアッド対向配置。一般的な接続法です。恐らくメーカーの言う通りの配線ならこの接続法になることでしょう。外来ノイズのキャンセル効果は最も高い。



スタークアッド平行配置。こちらは対向配置ほどのノイズキャンセリング効果はないし、インダクタンスも対向配置のほうが優れているのだが、+−間のクロストークは平行配置の方が小さい。音質的には平行配置の方が明らかに良い。